■医療事情
アメリカに移住したり長期間滞在すると、気になるのが「医療事情」です。言語だけではなく、医療保障のシステムも心配です。何も知らずにアメリカに行くと、日本との医療事情の違いに驚いてしまいます。
アメリカに行く前に、アメリカの医療事情をしっかりと勉強して、いざと言う時に慌てないように備えましょう。
日本と他国の医療制度
日本は、全国民に対して公的医療保険制度があります。この公的医療保険制度は、収入によって保険料が変わってきます。給付財源は、この保険料と税金から出ています。
日本の他にも、イギリスやスウェーデンなどでは、全国民に公的医療保険制度を実施しており、財源は税金です。このように、全国民に公的医療保険制度があっても、国によって内容は変わってきます。
アメリカやドイツなどでは、全国民を対象とした公的医療保険制度はありません。しかし、例えばドイツでは、国民の9割(高所得者と自営業者を除く)を対象にした公的保険があり、財源は保険料のみでまかなわれています。
アメリカの医療制度
アメリカの公的医療保障は、高齢者と身体障がい者と低所得者を対象とした医療支援制度になっています。一般国民は、民間の保険に加入するか、全額自費で医療費をまかなっています。アメリカの公的医療保障には、メディケアとメディケードの2種類があります。
●メディケア
高齢者と身体障害者のために作られた医療支援制度がメディケアです。アメリカ市民とアメリカ永住権の所持者及びその配偶者が対象で、5年以上アメリカに居住しており、10年以上メディケア税を納税した全ての65歳以上の人が対象です(社会保障障害年金を受給している障害者は年齢に関係なく対象になる可能性があります)メディケアは強制加入で、毎月の支払が義務化されています。
メディケアには4つのプランがあります。
- メディケア・パートA
:全員加入
入院の他に、半個室や食事、検査、在宅医療などでも給付対象になりますが、全額給付ではありません。 - メディケア・パートB:半強制加入
外来診療や在宅治療、医療用具などの保障です。勤務先のグループ医療に加入している場合は加入する必要はありませんが、勤務先にそのような保険がない場合は加入しなければなりません。 - メディケア・パートC:任意加入
メディケアから認可されている民間の医療保険会社が運営する保険。 - メディケア・パートD:任意加入
処方箋薬剤給付保険で、医師の処方した薬剤の費用に対する保険。
●メディケード
民間の保険に加入することが難しい低所得者と身体障害者用に作られた医療支援制度がメディケードです。費用はアメリカ公衆衛生局と州政府が共同負担していますが、運営は州独自のものになるため、内容は州によって異なります。
(要件を満たしていれば、メディケアとメディケードの両方から受給することも可能です)
ホームドクター
実際、アメリカで病気やケガになった時は、まずどんな病気でもホームドクターに相談します。アメリカでは「プライマリードクター」「プライマリーフィジシャン」などと呼ばれていますが、日本で言うなら「かかりつけの主治医」のことになります。
このホームドクターが、必要に応じて専門医を意紹介してくれます。入院や手術をする場合も、ホームドクターの紹介で、ホームドクターが契約している病院に入院をします。そのため、このホームドクター選びがとても大切になります。クチコミを参考にして選ぶのが一般的ですが、民間の保険会社に加入する際には、保険の種類によっては保険会社がホームドクターを数人指定し、その中から選ぶこともあります。また、ホームドクターのアドバイスに納得いかなければ、他の医者に意見を求めるセカンドオピニオンもアメリカでは積極的に行われています。最終的な判断をするのは、あくまで患者の意思になります。
アメリカの医療制度の問題点
アメリカの医療制度は、中間層になると、メディケードは対象外。だからと言って民間の保険会社に入るのも生活が厳しく、結果、無保険で過ごす方が多くなります。アメリカでは6人に1人が保険に入っていないと言われています。無保険の場合は、病院から診察を断られるケースもあります。
しかし、アメリカは医療費がとても高い国です。医師によっては、軽い頭痛に高額な鎮痛剤を使い多額の費用を請求するようなことすらありえます。疑問に思ったら、どんな治療でどれくらいの効果があるのか等、疑問に思う事は何でも自ら質問をする必要があります。
また、ICU(集中治療室)などに数日間入院すると、1,000万円以上請求されることもあります。アメリカでは、医療費が支払えずに借金を膨らましてしまう方もいるくらい、医療費がかさみます。公共のクリニックで簡単な診察や検査をするのに$50〜$100程度かかります。総合病院など大きな病院になると、さらに費用負担が大きくなります。また、薬代も保険がききませんので、全て実費になります。
アメリカの個人破産の60%以上が、医療費関係だと言われています。
マネージメントケア
医療費が高くなると、アメリカの民間保険会社の保険料が必然的に値上がりします。そうすると、保険料の支払いが厳しくなり解約されてしまい、保険加入者の減少という状態になります。そのため、医療費を減らすために、医療サービスの内容を制限する制度がマネージメントケアになります。
民間の保険会社に加入すると、医療の内容の決定権を民間保険会社がもつようになります。保険会社が指定した病院に受診し、一般内科医や家庭医がこのまま自宅で治療するのか、それとも診療費の高い専門医に診てもらうべきか、判断します。手術や入院1つするのも、保険会社の許可が必要になるのです。
もちろん、全額負担で自分の望む治療を受けることは可能です。